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あたしは椅子から立ち上がって、口元を覆った。
この光景をはっきり瞼に刻みたいのに。
涙で滲んで、よく見えない。
鳴り止まない歓声。
入り乱れるみたいに飛びついて、抱き合って喜ぶ、城英メンバー。
涙でくしゃくしゃの、鶴岡君と猪塚君。
哲太と肩を組んで、天を仰いで何かを叫んだ佐久田くんの顔も、
泣き顔だった。
コートの真ん中で少し困ったみたいな微笑をたたえた哲太の瞳が
静かにベンチのあたしに向けられ。
そして綺麗なその顔をクシャリとさせて、そして右手で、ピースサインを作ると、
いつかのように、白い歯を二って見せて。
艶やかに、笑ったの。
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