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◇
その、夜。
『城英高校男子バスケ部 祝勝会』
という看板の掲げられた、炭火焼肉店。
そこの2階の座敷の半分を占拠して、あたし達は大変なことになっていた。
「ねえねえ、みはね先輩。男子って、お肉で酔っ払うんですね」
後輩マネージャーの優ちゃんが怯えた目をして、あたしの袖を引っ張りながら向こう側の席を指さした。
……
そっち見て、目を半開きに溜息を吐く。
馬上君がでっかい声で何かを歌いながらお箸振り回して踊ってて。
他の仲間たちもそれ見てゲラゲラ笑ってる。
全くもう。
あたしはお肉を口に放り込み、もごもごしながら答えた。
「そうねー。あいつらは優勝とかってよりもう、『肉』さえあれば幸せなのよ……」
「あ~、もお、やだみはね先輩ったら~!佐久先輩が聞いたら怒っちゃいますよ~?」
優ちゃんがトンと肩をぶつけてきて、うっ、って食べかけのタン塩をのどに詰まらせて、ケホケホなった。
……せっかく忘れてたのに。
「あれ?そういえば。佐久先輩とモモ先輩、居ない……」
二つ分の空席を指さす優ちゃんにギクッとなったけど、
「あ、ああ。トイレじゃない?」
ってしれっと答えてみた。
「え、でも……戻ってくるの遅くないですか?お肉なくなっちゃいそうだし、私ちょっと探してこよかな」
よいしょって立ち上がりかける優ちゃんの袖を、慌てて引っ張って制した。
「あ、あ、いいよ優ちゃん、あたし行ってくる。手、洗いに行きたいから」
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