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「惚れ、た?」
上向き悪戯っぽく歯を見せた美跳の顔が、くしゃっと歪んだ。
「バーカ……」
苦笑いして抱き締めながら、零れる涙を止められなかった。
美跳の泣き上戸が、俺にもうつっちまったみたいだ。
胸に埋もれた美跳の軽やかな跳毛を、俺は何度も指で梳いた。
大好きだったんだ。
お前の髪を撫でるの。
小さい時からずっと。
お前より、ずっと。
けど、
……大丈夫。
大丈夫だ。
きっと、上手くお前の手を、離してやれる。
もう俺、迷ったりしない。
美跳。
躊躇わずに進むよ、今は。
今しか進めない道だと分かるから。
腕の中の美跳が涙声で小さく、
大好きだよ、
と囁いた。
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