#8 ウサギとライオン

3/16
10191人が本棚に入れています
本棚に追加
/557ページ
世のカレカノ同士って、毎日こんななの? よく平気でいられるな。 …… 「上杉?」 ずいっ。 と、漆黒の瞳でこっちを無遠慮に覗かれ、ひええと飛び上がるあたし。 「あ、ごめん」 「ご、ごめん、こっちこそ」 慌てて佐久田くんから飛び退いてしまった距離を、おずおずと詰め直すとちらっと彼を見上げた。 「ぷっ」 吹き出した佐久田くんは、ぽすっとあたしの肩に無遠慮にボールケースを預けて。 「ちょっと待ってて。チャリ取ってくる」 えっ…うそ。 「い、一緒に帰るの!?」 小走りに行きかけた大きな背中がこっちをクルッと振り向き、きょとんと。 「っていうか。送っていこうと思ってるんだけど?」 「送っ……え、ええっ!?」 そ、そんな。 「い、いいよ!大丈夫、家近いし」 「送らせてよ。これからずっと」 …… ざわわ、と夕方の風が中庭の木を揺らして、ジジッ、と短く鳴いたセミが、黄昏空に飛び立っていった。 「自分の彼女を夜道に一人帰すなんて、俺絶対無理」 ええっ!? そんな、付き合うってなった途端に、一緒に下校とか…… 「い、いや、ほら!いま夏だし全然夜道じゃないし!」
/557ページ

最初のコメントを投稿しよう!