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世のカレカノ同士って、毎日こんななの?
よく平気でいられるな。
……
「上杉?」
ずいっ。
と、漆黒の瞳でこっちを無遠慮に覗かれ、ひええと飛び上がるあたし。
「あ、ごめん」
「ご、ごめん、こっちこそ」
慌てて佐久田くんから飛び退いてしまった距離を、おずおずと詰め直すとちらっと彼を見上げた。
「ぷっ」
吹き出した佐久田くんは、ぽすっとあたしの肩に無遠慮にボールケースを預けて。
「ちょっと待ってて。チャリ取ってくる」
えっ…うそ。
「い、一緒に帰るの!?」
小走りに行きかけた大きな背中がこっちをクルッと振り向き、きょとんと。
「っていうか。送っていこうと思ってるんだけど?」
「送っ……え、ええっ!?」
そ、そんな。
「い、いいよ!大丈夫、家近いし」
「送らせてよ。これからずっと」
……
ざわわ、と夕方の風が中庭の木を揺らして、ジジッ、と短く鳴いたセミが、黄昏空に飛び立っていった。
「自分の彼女を夜道に一人帰すなんて、俺絶対無理」
ええっ!?
そんな、付き合うってなった途端に、一緒に下校とか……
「い、いや、ほら!いま夏だし全然夜道じゃないし!」
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