#0 Intro

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お花畑の匂いと、お線香の匂いが混じって、息苦しくてむせ返りそう。 さっきからずーっとお坊さんが、一本調子でお経を唱えてる。 厳めしい顔でなんだか、我慢大会やってるみたい。 考えながら明枝おばちゃんの手をまた、ぎゅっと握った。 お花畑の脇のパイプ椅子に座って考えていたら、あたしの前に一人のおばあさんが立った。 あのおばあさん、知ってる。 はす向かいに住んでる意地悪おばあさんだ。 あたしやてっちゃんが道で遊んでると、うるさいからってわざと水をかけてくるの。 あたしもてっちゃんも、ガミガミオババってこっそり呼んでた。 でもその日のガミガミオババは全然意地悪じゃなくて、何だかしおしおしてた。 「明枝さん」 ガミガミオババはおばちゃんの前に立って、泣きそうな声で言った。 「大変な事になってしまったわねぇ。……交通事故ですって?」 「ええ……」 「こんな小さい子を一人遺して……二人ともさぞかし心残りでしょうにねぇ、本当に」 おばちゃんに手を引かれたあたしをちらり見てそう言ってから、オババはポケットからハンカチを出して目に押し当てた。 明枝おばちゃんは少し困ったように眉を下げ、身体を屈めると、 「みはちゃん、ごめんね?あとでまた呼びにいくから、やっぱりさっきのお部屋に行っててくれる?」 って早口にあたしに囁いた。
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