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学校が休みの日、私は呉駅から山陽本線に揺られて横川へ 向かった。
リョナは学校は清掃作業などの為ずっと急行だったので横川駅で待っていてくれた。
顔はプロフの写真で知っていたのですぐに判った。
「あんたがりりっぺ? 綺麗な子ね」
「あんたがリョナたん? 実物は可愛えわ」
「何言いよんね、誉めてもなんも出んわいね」
「照れてからに」
そんな談笑を交わしながら、リョナの仮設住宅に歩き始める。
仮設住宅は簡素な構造で生活に必要なものしか無く、リョナがお気に入りだった洋服や縫いぐるみなどは土石流に流されたそうだ。
両親は毎日土砂の撤去作業で家を空ける事が多いので、寂しくなる筈だ。
呉から持って来たカテチ(固めのポテトチップス)などのお菓子やお茶やジュースを口にしつつ、二人で雑誌を広げて一緒に見たりして過ごす。
リョナにとっはこういう何気ない事が幸せなんだろうな。駅で見た時より幸せそうだ。
楽しかった時間はあっと言う間に過ぎ、時間は夜の23時になろうとしていた。両親も折角呉から遙々来てくれた友人だと長めの滞在を許してくれたのですっかり甘えてしまったようだ。
「いけんわ。早よせにゃ終電無くなる時間じゃ」
夕方過ぎてからの呉線はダイヤが極端に少なくなる。終電は広島駅が0時丁度なのでそれより早く駅に行かないと、
「待って、いかんといてや」
リョナが私の服の裾を掴む。
「じゃけど」
「あれじゃったら、泊まってけばええじゃん」
「……」
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