栗見鳴舞殺人事件

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「これ三太夫、余はあの娘を好むぞ。 はっ、御意にござります。ではさっそくあの甘味処の娘を呼んで婚礼の支度をいたします故… ピーピー、ガガ。DNA適性20%。命令を拒否します。 近くに適合率98%の個体を感知。回収班は確保に当たって下サイ。 え、いや…余はあの娘の方が好みであるから…。 貴殿の申請は棄却されました。より適合率の高い個体との繁殖を推称します。 えぇい、何故従わぬ!?余、殿様なのに…!」 三月。 シテイル学園での卒業式が開催されたこの日、察仁亭三水が卒業記念公演と題して新作落語を披露した。 始業式や終業式の学園長挨拶の跡は落語をやるのがすっかり恒例となったが、彼もまた卒業生なので学園で観られるのもこれで最後である。 演目は『メカ馬』古典落語の“妾馬”をフューチャーしており、サゲで登場する筈が途中で切られてしまう馬を話の冒頭から登場させている。 かの発明家、平賀源内先生に依頼してより強い子孫を残すべくして、安産祈願の為に造り出されし暗算機械。 対象の人物を視認するだけでDNAを検知し藩主、赤井御門守との御世継ぎを作るに適した女性を割り出すのである。 ちなみに 赤井御門守は落語に登場する架空の大名である。
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