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「お鶴、貧乏長屋のなき虫娘が今やお鶴の方様たぁ立派になっちまったなぁ。
おっ母も喜ぶぜ。
お殿様、どうぞお鶴を可愛がってやって下せぇ。」
話しは佳境に入る。
八五郎は年老いた母と妹の鶴との三人暮らしであったが、
鶴が城へ嫁ぎ、子供を授かったので城へ召喚されたのだ。
年老い、病に伏した母を家に残し長屋の大家から教わった付け焼き刃の尊敬語を使ってトチ狂った意味不明な日本語で喋る。
その辺りの流は古典落語の妾馬と同様であるが、今作はメカ馬が八五郎の意味不明な日本語を和訳してサポートする役目を果たす。
城には勤勉で堅苦しい家臣しか居なかった為か殿様は無礼だがあけすけな八五郎の人間味に惹かれて、褒美の金子を与えた上更には城勤めを命じる。
馬の登場場面が省かれやすいので落語では妾馬の題名よりも“八五郎出世”との演目で講じられる事が多い。
また、 赤井御門守は架空の大名だが八五郎には元になった人物がいて町人から侍に昇格し一気に大金を得た事で気が大きくなり元の気さくな性格とは一転、威張り腐った嫌味な野郎に成り下がった為に旧友達から見放されてしまう。(尚、この部分はほとんど演じられる事は無い)
そして何より登場人物であるが、大家と八五郎、 赤井御門守と三太夫の四人であるが
病床の母とヒロインとも言うべきお鶴が台詞の中に居るだけであり噺家は一切演じる事は無い。
語らずして存在感を与え、観客に想像を掻き立てる技能が要求されているのだ。
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