速く早くはやく。

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待って、まって、マッテ。 置いていかないで。 僕を置いていかないんで。 君はとても早く進んでしまう。 後ろを振り返りなんてせず、真っ直ぐ未来へ向かう。 僕は未練たらたらで、未来なんて見えなくて、寄り道ばっかりしているから。 僕はいつのまにか君に取り残されてた。 昔は君の隣を歩けていたのに。 あの頃はずっと走っていた。 走るのはね、もう疲れたからやりたくないよ。 だから僕は歩くんだ。 ゆっくりゆっくり。 でもそれでは君に置いていかれてしまう。 僕にとっては、早い周りを見ていると新幹線にでも乗ったかのような気分になるんだ。 待ってと、声に出してみた。 なんにも変わらないけど。 僕を置いて行かないで なんて、言ったって僕が走らないのが悪いんだろう? そんなこと分かってるんだ。 でも僕は変わりたくない。 どんどん周りは変わっていく。 僕は変わりたくない。 【ずっとこんな日々が続けばいいのに】 叶わない願望をそっと呟く。 【ずっと続く】、なんて。 僕らは時間というものを操れないんだから、ずっと、なんて曖昧なもの、実現できない。 僕は、 走れない僕は、 取り残された僕は、 停止し続ける僕は、 置いて行かれた僕は、 そこに留まることしかできない僕は、 変わればいいの? 消えればいいの? 走ればいいの? 死ねばいいの? 動けばいいの? そんなもの、できたらとっくにやっている。 できないからこそのこの問いであって。 僕は結局、そこにいるだけ。 存在しているだけ。 そんな繰り返した自問自答をゴミ箱に捨てた。
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