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もう待ってられないと、
荷物を車の中に置いて、
歩いてユージの店に向かう。
待つのは苦手なんだ。
時間が過ぎていかない。
店に続く階段をテンポ良く降りると、
顔写真があって…
ワタル。
けっこう売れてんだな…
時計を見る。
もうすぐ日付が変わりそうだ。
マリアには遅くなるかも知れないから、
先に寝ておくようにと言っておいた。
何があるか解らないから。
重厚な扉を開ける。
少し奥の方に座ってたユージが慌てて俺に駆け寄る。
「仁さん…ご無沙汰しております。
今日は…何か 」
「ワタル…さん、
お見えでしょうか…」
顔色が変わる。
俺がそんなに怖いか?
「航のヤツ、
今日、顔を腫らして来たもんだから、
帰らせました。
あんな顔じゃ店には出せないんで…
アイツ、
何かやらかしましたか…?」
ああ。
やっぱり。
顔を大分、殴ったみたいだな…
「あの顔は私のせいです。
彼が悪い訳じゃない。
ご迷惑をおかけしました。
ワタルさんの部屋、
教えて頂けますか?」
「航の部屋ですか…?
仁さんにあんなむさ苦しいところにご足労頂いては…
ここに呼びます 」
「いえ、私の方が出向きます 」
有無を言わせない程の迫力だったと思う。
ユージはすぐに簡単な地図を書いて、
差し出した…
「本当にご迷惑をかけて居ないんですね…?」
ユージは何かを怖がってる。
それが何かは、
だいたい想像はつくけど。
噂だけが一人歩きし、
実際の俺よりも怖い存在になってるのは、
俺も承知だ。
「お忙しい時間にお邪魔しました。
また、ゆっくり。
ありがとう…」
肯いて、そう言うと、
店を後にした…
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