第1章

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もう待ってられないと、 荷物を車の中に置いて、 歩いてユージの店に向かう。 待つのは苦手なんだ。 時間が過ぎていかない。 店に続く階段をテンポ良く降りると、 顔写真があって… ワタル。 けっこう売れてんだな… 時計を見る。 もうすぐ日付が変わりそうだ。 マリアには遅くなるかも知れないから、 先に寝ておくようにと言っておいた。 何があるか解らないから。 重厚な扉を開ける。 少し奥の方に座ってたユージが慌てて俺に駆け寄る。 「仁さん…ご無沙汰しております。 今日は…何か 」 「ワタル…さん、 お見えでしょうか…」 顔色が変わる。 俺がそんなに怖いか? 「航のヤツ、 今日、顔を腫らして来たもんだから、 帰らせました。 あんな顔じゃ店には出せないんで… アイツ、 何かやらかしましたか…?」 ああ。 やっぱり。 顔を大分、殴ったみたいだな… 「あの顔は私のせいです。 彼が悪い訳じゃない。 ご迷惑をおかけしました。 ワタルさんの部屋、 教えて頂けますか?」 「航の部屋ですか…? 仁さんにあんなむさ苦しいところにご足労頂いては… ここに呼びます 」 「いえ、私の方が出向きます 」 有無を言わせない程の迫力だったと思う。 ユージはすぐに簡単な地図を書いて、 差し出した… 「本当にご迷惑をかけて居ないんですね…?」 ユージは何かを怖がってる。 それが何かは、 だいたい想像はつくけど。 噂だけが一人歩きし、 実際の俺よりも怖い存在になってるのは、 俺も承知だ。 「お忙しい時間にお邪魔しました。 また、ゆっくり。 ありがとう…」 肯いて、そう言うと、 店を後にした…
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