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「おい!航
お前、仁さんに何か失礼なことしたのか?
さっき店に来られて、
住所を教えた。
すぐに行かれるだろうから部屋をキレイにしとけ。
茶ぐらい出せよ?
失礼の無いようにな?
で…
まあいい。
とにかく、
怒らせるような事はするなよ?いいな?」
電話がかかってきて、
布団を畳んだ。
電話をしようと何度も昨日の名刺を眺めては、
する勇気が無かった…
で、
もうこんな時間。
いつものように一番で店に出ると、
「なんだ?その顔は…
ホストともあろうヤツが、
顔をそんなにして…自覚がなさすぎだ。
掃除だけ済ませたら帰れ。
治るまで店には出れないぞ?
あ、掃除だけはしに来いよ?
ったく…」
怒られて、
背中を蹴られた。
毎晩のように指名をしてくれる客が来るのに…と。
昨夜。
帰ってから涙が出て、
その涙が眼の周りの傷にしみて…痛かった。
布団の中に潜ると、
今度は震えが止まらなくて、
痛い…と言うより、苦しかった
あの人にあんな事を告白して
そして、
あの人は、
麻美を守ると言った。
それはやはりそう言うこと…
麻美は俺のことは過去にして、
あの人と新しい人生を歩こうとしてるという事。
あの傷もなくして、
俺のことなんか、
すべて忘れようとしてる…
と言うことなんだよな…?
麻美…?
俺はまだ、
あの日のままなのに。
一度は、
別々の人生を…と、
大学に通い始めたけど、
やはりまだ…あの日のまま、
動けないでいる。
麻美のことを考えてるときの自分が、
いちばんしっくりくるんだよ…?
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