第1章

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*** 「おい!航 お前、仁さんに何か失礼なことしたのか? さっき店に来られて、 住所を教えた。 すぐに行かれるだろうから部屋をキレイにしとけ。 茶ぐらい出せよ? 失礼の無いようにな? で… まあいい。 とにかく、 怒らせるような事はするなよ?いいな?」 電話がかかってきて、 布団を畳んだ。 電話をしようと何度も昨日の名刺を眺めては、 する勇気が無かった… で、 もうこんな時間。 いつものように一番で店に出ると、 「なんだ?その顔は… ホストともあろうヤツが、 顔をそんなにして…自覚がなさすぎだ。 掃除だけ済ませたら帰れ。 治るまで店には出れないぞ? あ、掃除だけはしに来いよ? ったく…」 怒られて、 背中を蹴られた。 毎晩のように指名をしてくれる客が来るのに…と。 昨夜。 帰ってから涙が出て、 その涙が眼の周りの傷にしみて…痛かった。 布団の中に潜ると、 今度は震えが止まらなくて、 痛い…と言うより、苦しかった あの人にあんな事を告白して そして、 あの人は、 麻美を守ると言った。 それはやはりそう言うこと… 麻美は俺のことは過去にして、 あの人と新しい人生を歩こうとしてるという事。 あの傷もなくして、 俺のことなんか、 すべて忘れようとしてる… と言うことなんだよな…? 麻美…? 俺はまだ、 あの日のままなのに。 一度は、 別々の人生を…と、 大学に通い始めたけど、 やはりまだ…あの日のまま、 動けないでいる。 麻美のことを考えてるときの自分が、 いちばんしっくりくるんだよ…?
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