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「そなたの母は、人間として生きて欲しかったんだろう。だから、魔族がいなくなった時代を望んだのかもしれないな」
しみじみと男が告げる。
魚人はまだ呆然と口をパクパクしていた。
「…えっーと…じゃあ、オレは今生きていちゃいけないわけ?」
オレは100年後に生まれる予定だったわけだし。
「いや。もう手遅れだ。生まれたばかりならまだしも、こんなに成長してから私と出会っては、時間軸に不具合が生じてしまう」
よく分からなかったが、このままでいいってことかな?
「…もしかしたら…」
男が小さく呟く。
「いや、何でもない」
男はオレと目が合うと、笑いながら首を振った。
「…あのさー…」
オレは恐る恐る男に問いかけた。
「…オレの母親って、どんな人だった?」
いい歳して何を聞いているんだ。
聞いておいて、無性に恥ずかしくなった。
しかし、男は目を丸くしてから優しく微笑んだ。
とても綺麗な笑顔だった。
「それなら、そやつに聞けばいい」
男が指を差したのは、呆然としたままの魚人だった。
え?どゆこと?
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