1人が本棚に入れています
本棚に追加
「あー、もう!
なんでワイヤレスオート充電器壊れてるかなー。
一度にたくさん充電できるのはいいけど、
壊れてたら全部充電できなくなるなんて、
そんなの聞いてないよー!
ちゃんと日本製のやつ買ったのにー。
世界ダントツ一位の先進国に成長したんじゃなかったんですかー!?
しっかりしてよー、にっぽん!」
私は成すすべなく空を見上げる。
空にはまるで、集団移動する渡り鳥の群れのように、
アンチ重力カー、アンチ重力バイクが飛び回っていた。
「おいおい、見ろよあいつ。
地面を走ってるぜ。」
「きっとビンボーなんだろ。
アンチ重力バイクもアンチ重力シューズも買ってもらえないほどに。」
声のする方へ振り向くと、
二人の小学生くらいの男の子が二人、
ニヤニヤした顔つきでこちらを見ていた。
もちろん、彼らもアンチ重力シューズにより、
上空にいる。
それならば、見ていた、
というよりは、見下していた、と言った方が正しいだろうか。
「…無視無視。
それよりももう少しで学校につく、
この調子なら間に合うかも。」
私は走るペースを上げた。
念のために言っておくが、
私がここで走るペースを上げたのは、
学校へ少しでも早く着きたかったからであり、
これ以上、彼らの悪口を聞いていたら、
はらわたが煮えくり返りそうになるからとか、
そう言う類の話では決してない。
「お、あいつ、ちょっと早くなったぞ。
それでも、まぁ、こっちの方が断然早いけど。」
「それより見ろよ、あいつの走り方。
生まれたての小鹿みたい。
いや、生まれたての小鹿よりも走るの下手くそなんじゃねーの?」
最初のコメントを投稿しよう!