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タクシーは富川さんの指示通りに走り、古いマンションの前で停まった。
後部座席のドアが開き、降りる私たち。
タクシーが走り去るのと、肩を抱かれたのは同時だった。
私たちは無言のまま、エントランスに入る。
富川さんに触れている肩が、じんじんしていた。
さっきまで手に集中していた感覚は、肩に移っている。
周りには誰もいなくて、エントランスは静まりかえっていた。
エレベーターを待っている間、富川さんが照れ臭そうに言う。
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