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「どうしたの?ボーっとしちゃって」
「いや、ちょっとな」
あの日から約一年後の今。そんな彼女は俺の隣で、不思議そうに首を傾げていた。
「ちょっと昔を思い出していただけ」
四月のあたたかな日曜日。
美鈴とふたりで近所の公園まで花見に来ていた。
「え~どんな昔の話!?」
レジャーシートに横たわる俺を、興味津々な顔をして聞いてくる美鈴。
そんな美鈴の背後には、満開の桜の花が見える。
「いや、美鈴は昔から変わらずに可愛いなって思ってさ」
「……なっ!」
甘い言葉を言うと、案の定美鈴は顔を真っ赤にさせる。
その姿さえも可愛いと思えてしまう。
美鈴は知らないだろうけど、あの日の出会いから始まっていたんだ。俺と美鈴は……。
俺にとって運命の出会いだったんだ。
「もう知らない!!」
恥ずかしいのかそっぽ向く美鈴。
相変わらず可愛い反応を見せてくれる彼女から視線を逸らせない。
身体を起こし、美鈴の肩を抱き寄せ、耳元で囁いた。
『好きだよ』と――。
end
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