第一話 『どうして私にしか見えないの!?』

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助けておいて自分でもなに言ってるんだろうって思うけど、でも言わずにはいられないよ。 「しかもこんな高校の近くで自殺するなんて……!後味悪いったらありゃしない!!」 怒りは収まることを知らず、彼の手を乱暴に離すと同時に、思いっきり彼の頭を叩いた。 「これに懲りてもう二度と――……」 言いたいことを言って、最後に怒りを全てぶつけるように彼の頭を叩いたからか、妙にスッキリし、さっさとこの場から去ろうとした時、ずっと黙りっぱなしだった彼がいきなり私の腕を掴んできた。 「え……!ちょっ、ちょっとなに!?」 私の腕を掴んだままグッと距離を縮める彼。 初めて見た彼の顔に、視線は釘付けになってしまった。 さっきまでとにかく助けることしか頭になかったし、顔を見る余裕なんて全然なかったけど……間近で見る彼の顔は俗に言うイケメンだった。 よくテレビに出てくるような整った顔立ち。くっきり二重の瞳に高い鼻。少し厚みのある唇――。 平凡な顔の私には、眩しすぎる。 でも目を逸らせないのは、彼の瞳が私を強く見つめて離さないから。 どれくらいの時間、見つめられていただろうか。 覚悟を決めたように生唾を飲み込むと、恐る恐る彼は口を開いた。 「……あんた……俺が見えているんだよな?」
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