第一話 『どうして私にしか見えないの!?』

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「……は?」 見えている?? なに、この人……私のことをバカにしているの? あまりに真剣な面持ちだったから何を話すのかと思いきや……。 予想外な言葉にずいぶんと間抜けな声が出てしまった。 なのに彼ってば表情を変えることなく言葉を続ける。 「しかも触れられるし!!すっげ!!マジ感動!!」 「……あの?」 ちょっとこの人、本当に大丈夫?? もしかして頭おかしいとか? それもまたあり得るな。 だって道路の真ん中で寝ているくらいの人だし。 「やっと人に触れられたよー!つーかこうやって会話できるのとかすっげ久し振り!!」 いつの間にか私の腕を離し、なぜかテンション高めに喜ぶ彼に、まずます不信感が募っていく。 ダメだ、この人……完全におかしい人に違いない。 こんな人には関わらないのが賢明だ。 いまだにテンション高めな彼を残し、そっとこの場から立ち去ろうとしたけど、あざとい彼に見つかってしまった。 「どこに行くつもり?」 「え!?」 オーバーに身体がビクッと反応しつつもゆっくりと振り返ると、なぜか彼は妖しい笑みを浮かべては、じりじりと私との距離を縮めてくる。 え……なっ、なに!? テンパる私を他所に、どこか余裕ありげに笑う彼。
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