693人が本棚に入れています
本棚に追加
彼の瞳は、どこかミステリアスな部分を含んでいて、なぜか目を逸らせなくなる。
どんどんと近づく彼との距離に、なぜかドキドキと高鳴り出す胸。
恐怖からなのか、ときめきからなのかよく分からないドキドキが混ざり合う中、彼は色気のある声を漏らした。
「ごめん。……取り敢えず実行させてもらうから」
「え……実行?」
意味が分からず首を傾げた瞬間、突然唇に触れたのは彼の唇――。
初めて感じる温かな感触に、目を見開いてしまった。
少しの間触れていた唇はゆっくりと離れていくものの、私は瞬きさえすることが出来ずにいた。
えっと……いまこの人、間違いなく私にキスをした、よね?
混乱する頭をどうにかフル回転させるものの、思考が追い付かない。
なのに当の本人は、また意味不明なことを言い出した。
「……あ。思い出した。俺の名前……」
「……は?」
名前!?
「すっげ。……あんたとキスすると、本当に記憶が蘇る!!」
「はぁ!?」
とことん意味が分からない。
この人、本当に頭がおかしいのかもしれない。
「そっそれより!!なにしてくれちゃっているのよっ!いっ、今キッ、キスを......!!」
次の瞬間、さっきまでの情事がフラッシュバックされ、ボンッと音を立てるように顔が熱くなる。
最初のコメントを投稿しよう!