693人が本棚に入れています
本棚に追加
彼から視線を逸らすことなく、ジッと睨み付けていると、頭上から信じられない言葉が飛び出してきた。
「それにしても美鈴ってば一体どうしちゃったわけ?急に車道に飛び出すなんて」
「えーー?」
急にって......当たり前じゃない。彼を助けるためよ?
「飛び出したかと思えば、反対側の歩道にダイブしちゃうし。......なにかあったの?」
「なにかあったって...」
信じられない言葉に、ゆっくりと優里亜から身体を離し、不思議そうに私を見つめる優里亜の顔を、まじまじと見つめてしまった。
どういうこと?まさか私をからかっているの?
だって見えていたでしょ?道路の真ん中に寝そべる彼の姿が。
あんな場面を見せられてしまったら、助けないわけにはいかないじゃない。
なのに、どうして?
優里亜からゆっくりと視線を彼へと向けると、なぜか彼は悲しそうに笑っていた。
その哀愁漂う笑顔からは、諦めにも似た様子が伺える。
次の瞬間、大きくドクンと音を立てて高鳴り出す胸の鼓動。
次第にスピードを増す高鳴りに、呼吸をするのが苦しい。
優里亜の言動に、彼の表情。さっきまで彼は頭のおかしい人だとずっと思っていたけど、まさか......。
ある考えが頭をよぎった時。
「美鈴?なによ、そっちばかり見つめて。遠くに誰か見えるわけ?」
最初のコメントを投稿しよう!