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「ちょっとなんでついてくるのよ」
「仕方ねぇじゃん。俺が助かる術はあんたにかかっているんだから」
平日の昼下がり。
制服姿で駅に向かって歩く私の隣には今朝、私のファーストキスを奪った彼が両腕を後ろに組んで、呑気に鼻歌交じりに答えてきた。
自称ユーレイと名乗る彼は、どうやら本物のユーレイらしい。
彼に言われたものの信じられなくて、何度も優里亜に詰め寄ったものの、『見えない』の一点張り。
逆にどこか頭を打っておかしくなったのかもしれない、と心配した優里亜に無理矢理保健室に連れていかれてしまった。
心配する保健の先生や担任の先生にも、なぜかあとをついてきて、呑気に隣にいる彼の存在を確認したけれど、優里亜同様、心配される始末。
どうやら彼の姿は私以外の人には見えないらしい。
完全に頭を打っておかしくなってしまった。と決定付けられた私は、早々に病院受診を進められたのだ。
保健の先生に病院まで付き添ってくれると言われたけれど、丁寧に断った。一人で行けるし、最悪両親に付き添ってもらうからいい。と。
でも残念ながら私は頭を打っていないし、ましてやおかしくなんてなっていない。
だけど、なぜか見えてしまうのだ。彼の姿がーー。
「良かったな?堂々と学校サボれて」
そう。
この呑気すぎる自称ユーレイの彼の姿が。
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