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聞いてもいいのかな?......いや、いいに決まっているよね。
だってどうやら彼の姿が見えるのは私だけみたいだし、彼が言うように助かる術は私にかかっているみたいだし。
しゃがみ込む彼と視線を合わせるように、ゆっくりと私もこの場にしゃがみこんだ。
「あの、さ......聞いてもいいかな?」
「......なんだよ」
頭を抱え込んだまま、ぶっきらぼうな返事だけが返ってきて、ついムッとしてしまったものの、なんとか怒りを飲み込む。
「あのさ、その......どうしてユーレイになっちゃったの?それに、どうして私にキスをしたら、名前を思い出したの?」
聞きたいことを全て聞いてしまった。
だって変に遠回しに言っても仕方ないことだと思うから。
だけど質問をぶつけると、彼はピクッと身体を反応させたものの、なにも話すことなく黙りこんだまま。
それでも聞いてしまった以上、彼が答えてくれるのを待つことしか、私には出来ずにいた。
どれくらいの時間が過ぎただろうか。
車が滅多に通らないこの道路では、鳥の鳴く声と草木が揺れる音だけが耳に届いている。
少しして電車が走る音が聞こえてきた時、なぜか彼はゆっくりと立ち上がり、いまだにしゃがみ込んだままの私を見下ろしてきた。
「そんなの......俺が一番聞きてぇよ」
「えーー......」
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