第二話 『どうしてユーレイになっちゃったの!?』

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そう言うと彼は、私の頬からそっと手を離し、ゆっくりと立ち上がった。 「最初は俺も信じられなかった。自分は人間のはずだし、全然死んだなんて思えなかったし。......でも、誰にも俺の存在に気付いてもらえない日々が続くと、嫌でも実感しちまった」 彼の言葉がひとつひとつ胸に突き刺さる。 そう、だよね。 私以外の人には見えないんだもん。 こんなに周りは人で溢れているというのに、自分の存在に気付いてもらえないなんて、どんな気持ちだった? 彼の気持ちを考えると胸が締め付けられる。 気付けば彼の瞳を追いかけるように、自分も立ち上がっていた。 そんな私に、彼は言い放った。全てを諦めた顔をして。 「俺は死んでいるんだって。......信じたくないけど、ユーレイになっちまったんだって」 「ははっ」と乾いた笑いを漏らす彼に、さらに胸は締め付けられる。 なにか言ってあげたいのに言葉が出てこない。 だってそうでしょ? どんな言葉を掛けたらいいのかなんて、分かるはずないじゃない。 痛む胸をギュッと押さえ込む。 「でも......あんたには俺が見えるんだろ?」 「うっ......うん」 問い掛けに頷くと、少しだけ彼の表情が緩んだ。
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