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「最初は信じられなかったよ。今朝もさ、やけくそになっていて、どうせユーレイになったんなら、ユーレイにしか出来ないことをやってやろうと思って、道路の真ん中で寝ていたんだ。
そうしたら、さ......急にあんたが飛び出してきたじゃん?マジでびっくりしたんだよね」
「......それは私も同じだし」
びっくりしたのは、こっちの方だよ。道路の真ん中で寝ていたのだから。
「それに俺の姿は見えているし、腕を掴まれるし。おまけに怒鳴られて頭を叩かれた」
今朝のことを思い出したかのように、クスクスと笑い出した彼に、カッと顔が熱くなる。
「そっ、それは当たり前でしょ!?......私にはちゃんと見えているんだから。だから心配して助けて、怒るに決まっているじゃない」
唇を尖らせながら言うと、彼は驚いたように目を真ん丸くし、そしてふわりと目を細めて笑った。
「そうだよな。......普通に見えていたら、そう思うよな?でも、その普通のことが俺には嬉しかった。......それにキスしたら名前を思い出せたし。マジで奇跡だと思った」
「きっ、奇跡って......!」
たしかに彼にしてみれば、奇跡的なことなのかもしれない。
だけどそれはあくまで彼にとっての話であって、私には全く奇跡的でも、ましてや運命的なものでもない。
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