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「悪いけど私にとっては迷惑以外、なにものでもーー.....!」
「分かってるよ!」
私の声を遮るように発っせられた彼の声に、言葉を失う。
「分かっているけど、仕方ねぇじゃん?」
今にも泣き出しそうに表情を歪ませ、小刻みに震える身体ーー。
そんな姿を見せられてしまったら、なにも言えなくなる。
「あんたにとったら、迷惑な話でしかないと思う。......でも俺、嫌なんだよ。このまま自分自身のことが分からず、誰にも気づかれぬままこの世をさ迷っていることが」
叫びにも似た彼の悲痛な思いに、どう答えたらいいのか分からなくなる。
彼の気持ちは分かる。
自分の名前しか知らない中、誰にも気づかれないままこの世に留まり続けているなんて、嫌に決まっている。でも、だからと言って私に出来ることなんてある?
キスさせてあげればいいの?
いや、それだけは御免だ。
いくらユーレイといえど、好きでもない人とキスなんてしたくない。
それに、ユーレイになってまでこの世に留まり続けているってことは、彼にはなにかやり残したことや、未練があるからなんだよね?
それに彼が本物のユーレイなら、このままずっと一緒にそばにいたら、まずい気がする。
生身の人間とユーレイだよ?
とりつかれちゃうかもしれないじゃない。
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