693人が本棚に入れています
本棚に追加
いや......もしかしたらこの状況、すでに私は、彼にとりつかれてしまっているのかもしれない。
サーッと青くなっていく顔。
そうだよ。
こうやって見えるし触れる状況って、実はかなりまずいんじゃない?だって普通の人には見えないんだよ?
チラッと彼を見れば、どうやらずっと私を見ていたようで、バッチリ目が合ってしまった。
そして彼の瞳に捕まってしまった瞬間、視線を逸らせなくなる。
やばい。
やばいよ......。
だって予想できちゃうから。彼が今、私に何を言いたいのかを。
彼の声を聞きたくない。出来れば耳を塞ぎたいのに、塞ぐことが出来ない。
そんな中、予想通りの言葉を彼は口にした。
「迷惑を覚悟の上で頼んでもいいか?......俺を助けてほしい」
目を逸らすことなく言い放った彼の表情は真剣で、切実に私に助けを求めている。
そんな目で見られても困る。
だって私に出来ることなんてないでしょ?
でもーー......。彼を助けてあげることが出来るのは、きっと私だけ。
「頼むっ......!」
声を絞り出し、深く頭を下げた彼に一瞬で迷いはどこかへと吹き飛んでしまった。
最初からこうなる運命だったのかもしれない。
彼の姿を捉えてしまった瞬間から......。
最初のコメントを投稿しよう!