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なのにいつまでも“あんた”って呼ばれ続けるのなんて、なんか嫌だし!
そう思い言ったものの、いまだに驚いたまま立ち尽くす彼に、目が泳いでしまう。
別に深い意味などなく言ったつもりだったんだけど......もしかして、深い意味にとられてしまったのだろうか?
それだとすっごく困るんだけど。
「あっ、あのさ!」
目を泳がせたまま、さっきの言葉に深い意味などないって言おうとした時。
「カケル!」
「え?」
投げ掛けられた言葉に彼を見つめると、 さっきみたいに目を細めて笑っていた。
「だから俺の名前だよ。......よろしくな?美鈴」
一気にクシャッと表情を崩した笑顔に、完全にドキッとさせられてしまった。
はっ、反則だよ。
その笑顔で名前呼び捨てにするとか!!
いまだにバクバクといっている心臓。
鏡を見ていないから分からないけど、絶対私の顔、いまは真っ赤っかなんだろうな。
鏡を見なくても分かるや。
だって目の前にいる彼ーーカケルは満足そうに笑っているのだから。
もしかして私、判断を誤ったのかもしれない。
でもね、助けてあげたいって思っちゃったの。
今も目の前で満足そうに笑うカケルのことを。
ユーレイなカケルのことをーー......。
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