第十九話 『どうして愛しい日々を忘れてしまっていたのだろう』

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こんな自分なんて嫌だ。 早く元の自分に戻りたい――。 失った数ヵ月間の記憶を取り戻したい。 そうすれば全てが繋がる気がしてならない。……なのに、どうして思い出させてくれないんだよ。 その後も頭の中は、沢山の悩みが駆け巡り、この日はなかなか眠りに就くことが出来なかった。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ 「……――翔?」 部屋のドアをノックする音と声に瞼を開けると、いつの間にか寝てしまっていたようで、カーテンの隙間からは朝陽が差し込んでいた。 「翔?起きているの?」 「……母さん?」 寝不足でけだるい身体をどうにか起こし、ドアの方へと向かう。 ドアの向こうでは母さんが何度も俺を呼んでいる。 「ごめん、なに?」 すぐにドアを開けると、母さんはすっかりと身支度を整えた後で、しっかりと化粧もされていた。 だけど見て分かるくらい寝起きの俺の姿を見ては、申し訳なさそうに眉を下げた。 「ごめん、寝てたのね。お母さん、仕事に行くけどひとりで大丈夫かと思って……」 「ひとりでって……俺、もう十八歳なんだけど?」 子供じゃねぇし。
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