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「美鈴ー!!待たんかー!!」
「待つわけないでしょ!」
ここのところ恒例行事となってしまった、おじいちゃんとの朝の追いかけっこ。
神社の境内を制服姿のまま駆け抜けていく。
桧山美鈴、十六歳。
どこにでもいるような平凡な高校一年生。
ただひとつ、みんなと少しだけ違うとすれば……私がここ、桧山神社の“跡取り娘”ってこと。
境内を駆け抜け、鳥居をくぐり百二十五段ある階段を一気に駆け下りていく。
ここまで来ちゃえばさすがのおじいちゃんも、諦めてくれるんだよね。
チラッと上を見上げればおじいちゃんは悔しそうに唇を噛みしめていた。
そんなおじいちゃんに笑顔で挨拶を送った。
「行ってきま~す!」
「帰ってきたら覚えておくように!!」
決まり文句を言われたものの、そんなのいちいち覚えているわけがない。
神社の跡取り娘として生まれ、一人っ子の私は自然とこの神社を継ぐことが義務化されていた。
だけどそれはおじいちゃんと両親の考えであって、私にその意思はない。
「イマドキ神社の跡取りとかあり得ないし」
百二十五段、最後の階段をジャンプして飛び降り、両手を広げバランスを取る。
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