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「高校生になってから特に酷いのなんのって……」
「美鈴のおじいちゃん、神社が生きがいみたいだしね」
そう。
おじいちゃんは桧山神社に人生の全てを捧げていると言っても過言ではない。
昔から神社を継ぐよう言われてきた。
でも私はそんなつもりなかったし、おじいちゃん達も口だけの話だったし。
……なのに、なぜか高校生になった途端跡取りとしての修業が始まってしまった。
「これも全てあのヘンテコな掟のせいだ」
改札口を通り抜け、人の波に流されながらも進んでいく。
定期を鞄の中にしまいながらも、つい漏れてしまうのは大きな溜息。
そんな私を見て、隣を歩く優里亜は苦笑いを浮かべた。
「あぁ、あの昔からの言い伝えでしょ?私、美鈴から初めて聞いたとき思わず笑っちゃったよ」
「そりゃそうでしょ。私だって笑っちゃったもん」
五番ホームに辿り着いた電車。
数人の乗客が降りると同時に、人の波に乗って電車に乗り込み、窓側のスペースを確保する。
「私達も高校生で十六歳だもんね。おじいちゃんも色々と心配なんじゃない?」
意味ありげに笑う優里亜に乾いた笑い声しか出てこない。
「心配……ねぇ」
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