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おじいちゃんの心配……。
それは私の男女交際についてだ。
それというのも――……。
「だけどイマドキあり得ない掟よね。“初めてのキスの相手と生涯を共にすべし”なんて」
笑いを堪えるように口元を押さえる優里亜。
「ちょっと優里亜。当事者には全く笑えないんですけど。おかげで毎日跡取りとしての心構えを聞かされたり、手伝いさせられたり散々なんだから」
現に今日の朝だって境内の掃除をしろって言われたし。
朝からあんな広い境内の掃き掃除をするとか、信じられない。学校へ行く前に疲れちゃうよ。
「だけどすごくない?あの神社を継げるとか。就職に困らないしさ」
「それはそうかもしれないけど……でも私は、神社の仕事を一生するなんて絶対に嫌なの!」
だって神社の仕事なんて、一見華やかそうに見えるかもしれないけど、そんなの大きな勘違いだ。
毎日掃除は大変だし、とにかくやることが多い。
祭りの前は身を清める~とか言って水かぶったり、肉は食べちゃダメとか言うし。
お正月なんて不眠不休だし。
そのくせお金ががっぽり稼げるわけじゃないのだから、たまったものじゃない。
だからお父さんはたまにアルバイトをしては、家計を支えている。そんな両親とおじいちゃんを見てきたら、絶対継ぎたいなんて思わないと思う。
電車は学校のある最寄り駅に到着し、同じ制服を着た生徒がドアが開くと同時に一斉にホームに下りたつ。
エアコンの効いていた電車内から降りると、一気に蒸し暑い空気に包まれた。
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