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…――ずっと、ずっと昔のこと。
僕は『水龍』としてこの世に生を受けた。
生まれてから10年は人の姿になることが出来ず、ずっと巣穴から空を眺めてた。
お母さんとお父さんは必要最低限の生き物を狩って来ては僕に食べさせる前に言う。
『どんな命も平等なんだよ』
『だから弄んではいけない』
『その命を頂く時は感謝を』
僕の中でその言葉達が重なっていく。
いつしか『世界』を見る目が変わっていった。
どんな命でも愛おしく、去る命には涙した。
ある日、里の同族が森の生き物を食すわけでもなく、遊ぶように追い詰めて瀕死に追いやった姿を見て、僕の居場所は此処にはないのだと悟った。
そして瀕死から回復した生き物を連れ立って里を出る決心を。
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