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[枝]
「生肉が食いたい…できれば脂身がない筋肉質の肉……」
肉食獣人の辛いところ…それは主食である肉を食うことができないことだ。
食糧難が広がるこの御時世、高価な肉など滅多に口にすることができない…。
いくら人形だといえど、本能的に求めてしまう。それに俺は獣の血が濃すぎる…。
「どっかに草食獣人いねぇかな…指の1本ぐらいつまんでもバレないだろ」
雑食が羨ましい。
「そわそわしちゃってー…発情期?w」
「ちげーよ」
にやにやと隣に寄ってきて笑う我が国の総統、邑幸。
こんなんが総統か…世も末だな。
さっき拾った木の枝をくわえ、かじる。
「あ、今、オレのこと馬鹿にした?ひっどー、バドーのくせに」
「喧しいぞ、ユキ」
ガジガジと噛んでも口に広がるのは土の香りだけ。
慰めにもなりやしねぇ…。
ヤニと砂糖の甘い香りを直ぐ隣に感じつつ、木の枝を吐き出した。
end.
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