第一章 プロローグ

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《緊急案件よ、終わり次第至急マスター室へお願い。》 《3分で戻ります。》 《悪いわね。》 またか…。 最近どうも仕事が多過ぎる。 本来なら俺が出向くまでもないが、いかんせんギルドに持ち込まれる依頼数が多すぎて、人員が足りない。 漏れそうになる溜息をのみ込みつつ、目標を定め魔力を練る。 目標数ヒートラビット156体。 名前だけは可愛らしいが、実物はマグマが自然の魔素を蓄え形を成した体長1~2mほどの鼠の魔物だ。 俺の体内で膨れ上がる魔力に反応し、直近の数十体が猛然と突進してくる。 その際、ラビットっと冠される所以が出現する。 頭頂部から突進の勢いでマグマが左右に長くたなびく。 これが兎の耳の様だとか。 マグマを振り飛ばしながら大口開けたって、可愛らしい前歯がある訳でもなし。 先人は随分と楽観思考だったようだな、などどつらつら考えながら魔法を放つ。 途端に空中にキラキラとアイスダストが舞う。 周囲の耐火植物には接触しないよう、風魔法で操りヒートラビットの口内へ誘導する。 奴らは魔素や魔力が大好物だが、知能と呼べるものは無い。 取り込んだ魔力が、例えどんな物であろうとも飲み込む。 それが身を滅ぼすとも分からずに…。
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