第1章

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
「きみ、この村の吸血鬼伝説を知ってるかい?」 「なんですか、それは。存じておりませんが」 「どのくらい前の話だったかな、この村があの事業で成功したての頃。村には莫大なお金が入ってきたんだ。村にはというか、あの事業のリーダーである村長のもとに。それまで村は決して豊かではなかったがみんな協力し合って幸せに暮らしていた。でもそんな村の形は崩れ、村長の家は村の資本家として確立していった。村民には家のランクが設けられ、インドのカースト制度のように階級の違う者同士では結婚ができなくなった。そんな中、下の方の階級の青年と村長の一人娘が恋に落ちた。まあ、よくある話だよな。身分違いの恋。二人は当然報われやしない。駆け落ちを試みたが、直ぐに捕まり、村長を怒らした青年は村を追放された。でも、青年は村長を恨み、村長の家に火を点け、自害した。その時村長や娘が無事だったかどうかは、確認されてない。青年の遺体は村民によって簡素ながら埋葬された。」 「ふーん……。確かによくありそうな話ですね。報われない恋、青年の悲劇。それでどう吸血鬼なんですか?」 「それからなんだ。この伝説が始まるのは。唐突だが、その十年後に青年は吸血鬼となって復活した。その経緯はわからない。青年の容姿は十年前に等しく、いや、当時に比べ、引き込まれるような、なんとも、妖しい色気があった。見た目は普通の人間だった。牙なんてものは見せなかったし、むしろ魅力的な男に見えた。村の女たちは彼の虜となり、彼に噛まれていった。吸血鬼の食料は女の生きた血。村からはどんどん女が消えていった。そうなってくると彼の正体はバレだして、もちろん村民たちも黙ってられない。元凶の彼を倒そうと考えた。吸血鬼の特徴は、太陽の光に弱く、太陽が沈んでいる夜間に行動するということ、不老不死の怪力無双であるということ、倒すには太陽の日にさらすか、心臓を鉄の杭で刺すということ。結構無茶な話だと思はないかい?でもやらないと、村は終わる。でもこの話はあっけなく幕を閉じたんだ。」 「それは、なぜです?」 「彼が血を吸った女の一人に売春婦がいたんだ。吸血鬼は病気では死なないが、弱ってしまってね。そのスキにグサリ、とね。この村には売春しようなんてやつは男女ともにいないよ」
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!