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「…おまえが」
雪が降っているからか、指先から全身が冷えてゆく。
「おまえが死んでも俺、ずっとずっとお前のことわすれないから。」
「だから安心して逝ってくれ。」
そういい終えた彼の顔は涙でぐしゃぐしゃだった。
あたしの最後は交通事故だった。
彼の家に自転車でむかっている途中、車にはねられて。
即死だった。
あっけなくおわったあたしは、
そのまま死んでいるのにも気づかずに、一年もの期間を過ごしていた。
彼は一周忌に交通事故にあった此処で、あたしがまだ逝けてないことを知ったんだろう。
彼はあたしの大好きなコスモスの花束を、そっと道路の端においた。
いつのまにかあたしの頬にも涙が伝っていた。
ぬぐってもぬぐってもこぼれ落ちてくる涙。
あぁ、あたししんじゃったんだあ。
そう思うとよけいつらくて。
彼ともっといたかった。
あたしの心残りはきっとそれだけなんだろう。
あたしの体は消えかけていた。
雪のように。
「俺、ずっとお前のこと好きだから。」
おえつを噛み殺して彼はいった。
最後の最後に 愛されてるなぁ、あたし。と満足して涙をふいて顔を歪ませる。
「あたしもずっと。大好きだよ。」
これでもう心残りはなくなっちゃった。さあ眠りにつこう。
そんな歪んだあたしの顔は誰が見ても幸せそうな笑顔だったに違いない。
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