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「私のことを、ころしてほしいの」
少女は ほしいものをねだるかのように少年を見上げました。
少年は怪訝そうに目を細め 少女の話を静かに聞いています。
「わたしは家に居場所がないの。わたしは汚いのよ。だからはやくお星様になりたくて。貴方にころしてもらえたなら、きっと、綺麗なお星様に…」
そこでふと少女は喋るのをとめました。いつの間にか少年が目の前まで来ていたのです。
少女は願いを聞き入れてくれたのだと そう思い、静かに目を閉じました。
けれど少年は 優しく優しく少女の頭を撫でるだけでした。
優しく優しく。
体に
そして心に
暖かいものが 染み込んできます。
いつの間にか 少女の頬を透明な液体が伝っていました。
少女にはその液体がなんなのかわかりません。不思議そうに首をかしげ 自分の頬を伝っている液体を拭いながら、少女はたずねました。
「これは、なに?」
少年は 少女にいいきかせるように 静かにけれど力強く いいました。
「君が、綺麗な証拠だ」
その日少女は
初めて優しさにふれ
初めて涙を流したのでした。
―END―
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