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自分から誘ったこともはじめてであれば、もちろん断られたのもはじめてで、わたしは戸惑った。
そのすえ、断られてもはね除けけられても付き纏(まと)った。
わたしの噂は匠の友だちが聞きつけたようで、何回めか、立ち去る間もなく背後から告げ口が耳に入った。
「噂、だろ」
匠が友だちに返したひと言はうれしくもあり、そして、もやもやしたものをわたしのなかに生んだ。
それが何かはっきりしないまま、そのひと言に頼って押しかけていたら、いつの間にか追い払う言葉はなくなって、話しかけてくることはなくても仲間内のなかで一緒にいられるようになった。
「匠、明日、一緒にグリーンランド行きたいんだけど?」
告白から二カ月がすぎ、まもなく夏休みが始まる七月に入ってすぐ、匠を隣町の遊園地に誘ってみた。
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