2.おまえの好きってなんだ

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匠は受験生だし、夏休みまえになんとかしないと、長い時間、会えなくなってふりだしに戻りそうな気がする。 いま、わたしはずうずうしくも、『匠』と呼び捨てるようになった。 当の匠は咎めるでもなく聞き流しているようだ。 「お母さんが会社から入場券もらって、それをくれたの。ゲートのまえに十時。待ってるから!」 考えこむように黙った匠を覗きこみ、断られるまえに急いで時間を指定すると、返事を聞かないでわたしは教室へと駆けだした。 そわそわしながら、一方では、待ちぼうけのすえ、すっぽかされるということも覚悟していたのに、わたしが着いたのとほぼ同時に匠はやってきた。 「匠、ありがと!」 「何乗るんだ?」 お礼は無視されて、ぶっきらぼうな質問が返ってくる。
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