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第1章 白い部屋
土砂降りの雨の中、男が一人家路を急いでいた。
男の名前は船堀、知名度こそ低いがそれなりに食っていける程度のお笑いコンビ[ブラインド]のツッコミの担当。
黒メガネにぼふっとしたくせっけのある髪が特徴だ。
その日、船堀は四組のお笑いコンビのトークイベントに出演していた。そして、そのライブ終わり彼は帰り道を急いでいた。
(ああ、今日のトークライブは楽しかったなぁ。)
黒い傘で庇いきれない雨が肩を濡らし、跳ね返る水しぶきがスーツの裾を汚す。
船堀はそれを煩わしく思いながらも、今日のトークライブが好調だったこともあって上機嫌だった。
携帯がポケットの中で鳴っているの気付いたのは近道をしようと裏路地へ曲がった時だった。
「もしもし?森下先輩ですか?」
『あ!船堀?フナか?』
「はい、先輩が僕の携帯に掛けたんだからそりゃ僕が出ますよ。」
『いま、どこ?どこにおる?』
「えっ、家に帰ってるところですけど、どうしました?」
『できれば人目の付く所にいろ!ええな!』
「ちょっとなんなんですか?ちゃんと事情を・・・っ!」
立ち止まって、裏路地からすぐ人目の多い通りに戻ろうとした。
しかし、船堀の体は人目に付く前に路地へと引っ張り込まれ、その勢いで携帯を落としてしまった。
『おい!フナ?フナ!』
落とした携帯からはずっと船堀を呼ぶ声が聞こえている。
しかし、船堀がそれに答えることはなく、引き込まれた路地裏で口を塞がれ意識を失った。
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