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一歩一歩、ベッドに近づくあたしは足音も立てないように慎重に。
もう手を伸ばせば届く距離まで近づいてから。
「ほら、起きろ!」
そう言って、ベッドの上にできた塊にダイブすると。
「ぐ、はぁっ」
なんとも間抜けな蛙のつぶれたような声がした。
すかさず布団をはがして、その痛みと驚きに歪んだであろうその顔を拝もうとしたけれど。
あたしと純人の間に挟まれていた布団が、そのままあたしに襲い掛かってきて。
身体を包まれたかと思うと、ぐるりと身体が反転してギューギューに押しつぶされた。
「凛。もう少しまともな起し方で出来ないの?」
その上から、寝起きのはずなのに擦れることなく爽やかな声。
この家は“爽やか”から出来ている、なんて呑気なことを考えながらも。
さすがに布団に包まれたままだと息苦しい。
「…純人、苦しい」
わざと声色を変えて息苦しさをアピールしてみれば。
慌ててその布団をはがしてあたしを救出してくれる彼の優しさに、ココロの中でニヤリと微笑んだ。
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