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風俗店が軒を連ねる繁華街。
表通りの怪しげなネオンが性欲をくすぐり、本能の赴くままに人間を動かす。
世界でも、名の通る繁華街の素顔は、欲望と喧噪に明け暮れる街であり、観光地とはほど遠い。
その街の光の裏にある闇とでもいえる細い路地裏で、ハゲ散らかした背の低い初老の男が、若い男に声を掛けられた。
「あんた、シゲミ・田中だろ?」
ベースボールキャップにグレイのパーカー、ジーパンにランニングシューズといったラフな姿。
深く帽子をかぶっているので顔までは分からない。
薄明かりしかない路地裏だから、そこまでしなくても顔は分かりにくいが、この男の職業が、そうさせていた。
「誰じゃ?」
「殺し屋」
一見すると、何処にでもいそうな若者が飄々として発した言葉が信じられない。
嘘だと思い、シゲミはもう一度聞いた。
「殺し屋?・・・・・・そう言ったのか?」
「あぁ。依頼があってな。」
身に覚えがあり過ぎるため、こういった出来事は警戒していたが、まさか自分の前に直接現れるとは思ってもいなかった。
「殺し屋が人の前に姿を見せるのか・・・・・・誰の仕業じゃ?」
「契約上、それは言えん」
静かに歩み寄る若い男に、ただならぬ恐怖を覚えたシゲミは、震えた声で叫んだ。
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