第1章

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真冬の凍るような寒さがやわらいで春がきた。あんなに積もっていた雪が太陽の熱さに負けてどんどん低くなって行く。気づけば滑り止めの砂の中で灰色になってしまってすこし名残惜しいような気がした。 「春がきたんだ」 雪から顔をあげると塀から飛びたす木が目に入る。ほぼ枯れ木の状態ではあるがよく見ると先端にわずかに青くふくらんでいる。 春が来た。 ぼくはもう一度口に出した。
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