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使用人「…!オ、オルド様!エイラ様!頭が見えてきております、あともう少しですよ!」
使用人のうちの一人が笑顔で報告する。他の使用人たちからもおおおおっと声が上がる。
使用人を無下に扱う貴族も多いのだが、六大貴族はそうではない。
これは部屋に集結し自分の事のように喜ぶ使用人たちを見れば分かってもらえるだろう。
オルド「誠か!おお、なんと素晴らしい…エイラ、頑張ってくれ…」
エイラ「うっ…はぁ…はぁ…うううっ…」
エイラは夫の問いかけに応じることができない。それほど痛みが強くなってきたのだ。
オルドがゆっくりとエイラの手を握る。
エイラがそれに応えるかのように、一際大きなうめき声を上げる。
そして、その時はついに訪れた。
オルド「おおっ…生まれたぞ、俺たちの子供だ!エイラ、よくやった!…エイラ?」
しかし、その夫の呼びかけにエイラはピクリとも動かない。
オルド「おい…エイラ?エイラ!」
使用人「オルド様、心配なさらずとも大丈夫ですよ。あまりにも難産だったので、安心して気を失ってしまったのでしょう」
良く見ると、エイラの胸がかすかに上下しているのが見て取れる。
オルドは一安心というように溜息をつき、改めて赤ん坊を見つめる。
そこで、あることに気づく。
オルド「赤ん坊というのは…生まれてすぐに、産声を上げるものなのだが…」
使用人「…そうですね、息をしてないわけではないようですが…」
赤ん坊はただもぞもぞと体を動かすだけで、産声を上げる気配がない。
使用人たちからもざわざわと不安の声が上がる。
オルド「ど、どうすればいいのだ…本当に大丈夫なのだろうか…」
使用人「ぞ、存じ上げません…!誰か、産声を上げぬ赤ん坊の前例を調べ…」
その時、
「オギャァァァァァァァァァ!!」
それまで体をしきりに動かしていた赤ん坊が、突然大きな声をあげた。
それを産声ととったオルドと使用人たちは、またもや一安心とため息をついたのである。
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