25歳

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「あれ、ない。」 バッグをいくら探しても 車のキーが見当たらない。 仕方なく、もう一度会社へ戻る。 これで5分くらいロスだな。 自分の部署に入って 真っ先にデスクを目指す。 「帰ったんじゃないの?」 声をかけてきたのは 同僚の楠本(くすもと)。 「あー、うん。車のキー忘れて。」 「急いでんの?」 「今日デートだから。」 「へぇ。楽しんで。」 楠本はそのまま 自分のパソコンに向き合った。 デスクの端に忘れられていた、 車のキーを手にして もう一度残っている人に挨拶をする。 「今度こそ、お先でーす。」 そのまま出ようとする。 が、入り口に1番近い楠本が キャスター付きの椅子で スーッと滑ってきて 進路を塞いだ。
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