ⅩⅤ

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   おれは二人の間に立ち、おそらく今までで一番真面目な声で言った。 「汝、安河内裕子さん。  あなたは、立石昭三を夫として終生愛し、喜びのときも、悲しみのときも、これを敬い、これを慰め、これを助け。  その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」  嬉しさだろう、また裕子さんの頬を涙が伝う。だけど力強く宣誓した。 「はい。誓います」  ヤバい。裕子さんに貰い泣きしそうだ。おれは口びるを噛み涙をこらえた。ゆっくり昭三さんに向き直る。 「汝、立石昭三さん。  あなたは、安河内裕子を妻と認め、終生愛することを誓いますか?」  その時だった。  天井から流れているオルゴール曲が変わった。  これは──  おれの大好きな曲  ビートルズの『I will(アイ・ウィル)』だ。  中学生の時に初めて聞き、そのメロディアスな曲に一発でしびれ、自分で訳した記憶がよみがえる。確か、こんな歌詞だった……。 『ずっと君を好きだってことは  きっと誰も知らない  だけど今でも君を愛してる  僕は一生淋しく  君を待つのかい?  もしも君が望むのなら  僕はそうするよ  ずっと君を愛している  心の底から愛している  一緒にいても離れていても  僕は君を愛し続ける』   
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