エピローグ

6/6
254人が本棚に入れています
本棚に追加
/382ページ
   その対戦を二人の友達がよく見にくるんだよ。探偵事務所がさながら、老人ホームになる日がある。  でもいいさ。  年を取って行き場がないのは淋しいから、ここで茶飲み友達を増やして貰えれば、おれも嬉しいよ。  彼らの話しは主に、年金、健康、孫の自慢話だけど、時々戦争の話が出るんだ。  みんな同じことを言う。 「戦争でいい思い出なんか、一つもありゃしない」 「笑顔で語れない話ってのは、間違っているんじゃよ」 「戦争なんて、二度とごめんだ」  確かに、戦争は始まればただの殺し合いだ。いかに効率よく、いかにたくさんの人を殺したかを競いあうもの。  戦争でまず犠牲になるのは、一般市民の女性や子どもたちだ。決して、戦争を始めた権力者の家族ではない。  知ってほしい。  正しい戦争など、無いってことを。  おや? タケシが顔をあげた。  じっと扉を見つめている。  もしかしたら……。  ノックがした。  どうやら次の依頼人のようだ。  今度の相談は何だろう。  たとえ相手が誰であれ、どんな内容であってもおれは、精一杯の幸せを届けるよ。  もしも悩みがあったら、あんたも来てみなよ。  おれとタケシが待ってるから。  この『愛田探偵事務所』でね。          (了)      
/382ページ

最初のコメントを投稿しよう!