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「おかげさまで博多っ娘は、国内外からありがたい評価をいただき、一昨年発表した『やわらか饅頭 博多合わせ』も、好調に売上を伸ばしております。
そして昨年想月堂は、念願だった、年商100億円を達成しました」
言い終わった裕子さんは、誰に向けるでもなく、両手を合わせ頭を下げていた。
あの、『やわらか饅頭 博多合わせ』も、想月堂だったのか。
それは、およそ饅頭には見えない四角いカステラの生地に、つぶ餡とホイップクリームの二層建てを詰めこんだ、和と洋の味をミックスしたものだった。
確かに、一度食べたら誰かに話したくなる商品だ。
その二大ヒット商品で、売上が大台の100億を達成したのか。素晴らしい。商品と共に、企業姿勢が世間に受け入れられた証だ。
ようやく発言できる雰囲気になってきた。まずは昭三さんが口を開く。
「そうでしたか、年商100億を。それはおめでとうございます」
裕子さんは軽く頭を下げただけで、さしたる笑顔を見せない。短い付き合いだけどわかる。こんな冷めた表情を見せる時の裕子さんは、頭をフル回転させている。これからの昭三さんや角児への応対を考えているのだろう。
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