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ひとつ息を吐き、昭三さんは続けた。
「先ほど言われた、『事業の目的が利益を上げることだけに集中すれば、どこかで道を違える』とは、深い言葉ですね。
確かに、目的が利益を上げることにとらわれれば、手段を選ばなくなり、社風は荒廃するでしょう。
逆に、手段が正しければ、自ずと利益は着いてくる。
経営とは、そうありたいものですね。今となっては遅いですが……」
自嘲気味の昭三さんの笑みを、裕子さんが弾き飛ばした。
「遅くなんかないわよ、昭三さん。今からでも間に合います」
笑みを捨て、昭三さんは眉を寄せた。
「今からでも、とは……」
裕子さんはふっと笑い、企業の会長らしく言った。
「先ほど昭三さんは、施しは受けない、とおっしゃられましたが、例え私が会長職だとしても、おいそれと三億もの大金を、右から左に動かせるものではありません。
上場はしていませんが、役員や株主を説得しなければ出せませんよ」
昭三さんは、はた、と言う目になった。
「申し訳ない。それはそうですよね。会社という組織であるからには」
昭三さんは、自身の反省を顔に浮かべている。
すると裕子さんは、エスティ運送の未来を告げた。
「お金を渡すだけでは、エスティ運送さんは立ち直りません。
三億円は、ビジネス契約を交わすための支度金として、御社に用意させていただくものです」
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