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おれより驚いているのは、社長の角児だった。銀行から泥船だと罵られた会社を、違う見方で評価されたのだ。嬉しくないはずがないだろう。吃りながらの角児が笑えた。
「ま、まともならば、うちは黒字経営だったのですか?」
裕子さんは微笑み、ゆっくりとうなずいた。
「収益性をみる売上高利益率は悪くないし、成長性を判断する、純資産増加率は安定してるわね。
負債比率が高いから、ちょっと役員とは揉めるでしょうが、将来性を説得材料にして、彼らを納得させるわ。
今後はキャッシュ・フローを活用して、会社をマネージメントしましょう。そうすれば、もっと良くなるはずよ。
お金に色はついていません。誰が出しても、それは構わないのです。
今回は私が用意する三億で、負債を整理してやり直しましょうよ、ねっ社長」
角児は赤みが差した顔で、感謝の言葉を述べて、深々と頭を下げた。
「ありがとうございます。何とお礼を申していいのか、わかりません」
角児に倣って、頼子と真理子も丁寧な黙礼を見せた。決意を胸に秘めたような強い表情で、角児は頭を上げた。
「会長、先ほど言われた弊社とのビジネスとは、どのような業務契約になるのでしょうか?」
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