ⅩⅤ

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   裕子さんが話す度に、みんなの熱気で部屋の温度がぐんぐん上昇していく。  裕子さんにしても、見知らぬ土地で、数社の運送会社と契約を交わすより、頭を決めて配車計画まで立てさせる方が効率はいい。  そして、エスティ運送にとっては、言わずもがなだ。    裕子さんの未来展望が続く。 「想月堂は、五年後を目処に上場するつもりです。  その際、株式公開で集まる資金を、三十億から四十億円と試算しています。  銀行とも相談はしますが、その調達資金で、阪神、関東、東北エリアに工場を作って、全国配送ができる態勢を敷く予定です。  もし良かったら、その時もエスティ運送さんに絡んで欲しいんだけど、どうかしら?」  何だかどでかい話になってきた。角児に異論があろうはずがない。即答だった。 「ぜひ、会長の夢にわたしも乗せてください!」  角児の熱を受けとめ、裕子さんはゆるりと笑みを見せた。 「私の夢?  そうね、それは同時にあなたの夢でもあるわね」  首をかしげる角児に、裕子さんの優しさが突き刺さる。 「そうなったら、全国にエスティ運送さんの営業所が出来るでしょうから、その時は、御社の優秀な社員の皆さんを派遣してくださいね」  角児は、ああ……と言う顔をした。  まだ、裕子さんに悪態をついていた時に角児が話した、いずれ部下たちを、各事業所の責任者に就かせたい、それを覚えていたのだ。  角児の泣き笑いの顔が、おれにも響いた。  
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