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それからは、今までの角児を封印し、これからの未来を励ますような、裕子さんの言葉だった。
「人間の本性が現れるのは、平時ではなくて、追い詰められたときよ。
誰にだって、仕事や家庭に潰されそうなことはあるわ。
だからと言って、気を紛らわす手段として、酒や……」
止まった。その後『女』と言おうとしたのだろう、裕子さんは無理やり口を閉じた。代わりに。
「……様々な欲望に道を求めるのは、虚しくないかしら。
辛い時や、仕事で追い詰められたら、どうせならば仕事に逃げなさい。努力は人を裏切らないものよ」
角児は口を結び、うつむいている。黙って非難を受けているようだ。裕子さんのエールは続く。
「人生における、あらゆる失敗の原因は、自分のことしか考えていないからだと思うの。
今までのあなたは、出来ない理由を、環境を言い訳にして、努力から逃げていただけじゃないの。
出来ない自分を責めている限り、永遠に幸せにはなれないわ。今の自分を認める勇気を持つ者だけが、本当に強い人間になれるのよ。
弱い自分を認めなさい。不完全な自分を認めることは、別に恥ずかしいことでも何でもないのよ。それを受け容れて、許すことよ。
完全な人間なんて、この世に一人も居ない。だから人は努力する。泥臭さくても完全を目指そうとするから、人は愛らしいのよ。
『やる気がなくなった』人はそれをよく口にするけど、それは違う。
『やる気をなくす』という決断を、自分がしただけなのよ。
同じように『変われない』のではない。
『変わらない』という決断を、自分でしているだけのことよ。
これを機に、あなたも変わりなさい。
そして『おれにもやれるんだ』と強い自信を持ちなさい。
あなたなら大丈夫!
きっと上手くいくわよ」
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